3つのループ ~社会、個人、会社~

こんにちは。
1か月ぶりの更新になってしまいました。

働き方改革関連法が今年4月に施行となり、企業にとっては、「働き方改革」による長時間労働の抑制・生産性向上を中心として、従業員の健康に配慮すべきことの責任が増してきたといえるでしょう。それと同時に、今後は「ワーク・ライフバランス」について本格的に推進すべき段階が来たといえます。また、従業員の健康といえば「健康経営」への取り組みも忘れてはなりません。
今日は、個別に対応しがちなこれらの取組・言葉の関係性について考えてみます。

「働き方改革」といえば、「働き方」の改革(少なくとも見直し、改善等)をし、仕事の生産性向上を目指すものと考えてよいでしょう。「ワーク・ライフバランス」というと、仕事と私用、つまり公私の時間的均衡を図るものと考えている人も多いようです。しかしこれは少し違います。「ワーク・ライフバランス」とは、「仕事と生活の調和」を図るものと定義されおり、必ずしも時間という定量的な視点での均衡とは関係ありません。
では、この「調和」を図ることがどのような意味を持つのでしょうか。現実的には、生活、即ち仕事以外の全般についても過不足なく必要なことができることでしょうが、理想的には、性・年齢に応じた多様かつ適正な働き方ができ、自己啓発や健康増進、家族と向き合う時間を増やすこと等を通じて、仕事も生活も一層充実した日々を送ることができるようなことでしょう。
つまり、「ワーク・ライフバランス」は会社にとっても従業員にとっても理念的な位置づけであり、「働き方改革」は、それを実現する重要な構成要素としてとらえられるでしょう。

さて、もう一つのキーワード「健康経営」は、簡単に言うと、「戦略的に、従業員の健康に配慮した経営手法」ということであり、「健康企業宣言」「健康経営優良法人」等の言葉も聞いたことがあると思います。

ここまで簡単に「働き方改革」「ワーク・ライフバランス」「健康経営」の意味合いについて述べましたが、それらはどのような関わり合いを持ち、社会、従業員(個人)、会社(企業)にとってどのような関係性があるのか整理してみました。結論だけいうと、「ワーク・ライフバランス」「働き方改革」「健康経営」を三位一体で取り組むことで、社会・個人・会社の3つのループを回し、相互に成長させるということです。

ワークライフバランス、働き方改革、健康経営
ワークライフバランス、働き方改革、健康経営による成長ループ
ワークライフバランス、働き方改革、健康経営、関係
ワークライフバランス、働き方改革、健康経営の関係性

実は、根底にある背景は、超少子高齢化社会、人口減少、社会保障費の増加であり、逆に、少子化対策、女性参画を中心とする労働力確保、個人の健康維持・増進、多様化社会に対応した経済活動といったところが、我が国としての目指す方向性と考えられます。
これらにより、20世紀の人口ボーナス期(人口増大期)型の社会経済活動から21世紀の人口オーナス期(人口非増大期)型の社会経済活動への転換を図ることが、日本社会全体の目的観と考えるべきでしょう。

(参考)
内閣府-「仕事と生活の調和」推進サイト
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/

(了)

経営戦略としての「働き方改革」

こんにちは。

すっかり桜も終わってしまった今日この頃、新人研修帰りらしき人々も見かけます。新人研修では、社長をはじめ、幹部層から「働き方改革」について言及のあった会社も多いのではないでしょうか。

その働き方改革。今年度から「働き方改革担当」を設置してその活動を本格化させた会社もあると思いますが、その一方で、『仕事が増えているのに、上司からの「早く帰れ」「まだ帰れないのか」のプレシャーの毎日、それがストレスだよ』という「時短ハラスメント」に悩む現場部署の社員もいるでしょう(いるはずです)。また、『早く帰るようになると追加で仕事を押し込まれから、適当に制限いっぱいまで残業をして帰る』という社員もいるでしょう(いるはずです)。
前者のケースでは、新たなメンタルヘルス問題のタネとなりますし、後者のケースでは働き方改革の成果が上がらない原因となります。
さらには、「残業ゼロ」を目的化してしまっている経営層・管理職もいるでしょう(いるはずです)。このケースでは、いわゆる「隠れ残業」「ヤミ残業」「抜け道残業」を定常化させてしまうリスクがあるといえます。
それともうひとつの側面。真にまじめに、仕事上のノウハウ吸収や勉強を意識して自ら進んで夜遅くまで頑張る若手社員、その心意気は否定できないでしょう。

現場でできる創意工夫は精一杯やって業務効率を上げる。それにより社員ひとりひとりがワークライフバランスを充実させる。まず、経営層がそうした現場レベル、社員個人レベルでの目標に心底共感し、それを応援する姿勢が「実を結ぶ働き方改革」には必要です。とはいえ、それを社員に信じてもらえる経営層とそうではない経営層がいるでしょう(なぜそうなるのかは、およそ想像がつくと思います)。当然、社員と経営層の相互信頼性のある方が働き方改革の成果を出せやすいといえます。
その一方で、経営層は、働き方改革の経営上の目的をどのようにとらえるのか、きちんと定義する必要があります。すなわち、「経営戦略の一環としてとらえられていない働き方改革は成果をもたらさない」と認識すべきです。ここでは詳しく述べませんが、働き方改革は、「ブランディング」と「稼げるビジネスモデル」を考えるよいチャンスとしてとらえましょう。

残業規制ができたからそれに従う。それだけの経営でいいですか?
画一化社会、大量生産・大量消費の時代はとっくに終わっている多様化社会の今、働き方改革の実践による社員のワークライフバランスの充実、その先の社員と会社の成長をきちんと考える。そのよいチャンスかもしれません。

<おまけ>
昭和の中の、時代とともに捨てるべき悪しきコトと、時代が変わっても受け継ぐべき良きコト、これを整理すべき時代が平成だったのかもしれません。まだ、間に合うかも。

(了)